2008年08月29日

「シナリオは下手に楽に書け」 橋本忍

「七人の侍」で黒澤明監督とタッグを組んだ
脚本の大先輩・橋本忍さんのおはなし、
BS2でやってましたので食い入るように見ました。
「七人──」の脚本作業は黒澤監督と共同、
というかコンペ方式で、
いい方を小国英雄さんが判定して採用する、
という非常にシビアなもの。
これ厳しいですよ。
私も経験有りますけど、ものっすご厳しい。
単純にパート分けしてあとで微調整、
という形式とはまるで違う。
コンテンツはなんでもそうですが
「使われない」
ということほど堪えるものはなく、
まあ言わば「存在の全否定」ですからね、
それがたとえ小刻みにもあるとハッキリ萎えます。
萎えないようにするには勝つしかないのですが、
相手黒澤明でしょう。
そらぁしんどいですよ。
それはもう、黒澤監督や小国さんに対して、
そしてこれから生まれるその作品自体に対して、
全幅の信頼を置いてないと無理です。
負けたこれも勝ったそれを生み出すためのものだ、という。
そのこともあってか、
その作業を缶詰した旅館は
囲碁・将棋の名人戦も行われるような
名旅館だそうですが、
食事持ってきた仲居さんが入り口で後ずさったそうです。
その鬼気迫る様子、
名人戦なんかの比ではないという。

そんなこんなであの大傑作が生まれたそうですが
(その方式はそれ以降やってないそうです。
 あまりに辛くて)
映画作りを志す若人に向かって冒頭の言葉。
なんとなれば、
人は子供の頃から勉強する。
なにかを教わる。たくさんの知識を得る。
しかし創造力についてはなにも勉強していない。
だから、自分の批判力は自分の創造力を遥かに上回ってしまう。
だから、自分を批判していてはシナリオなんか書けない。
極端に言うとシナリオは、
批判力をゼロにした時にはじめて生まれる。
そう、下手に、楽に書け、と。

胸のつかえがストーンと落ちる名言でした。
そうですよ、そう、
これはシナリオばかりではありませんよ、
仕事全部そうです。
特に昨今、情報を手に入れることは極めて簡単になりましたから、
批判力>>>創造力
の不等号は大きくなり続けていると言えましょう。
そして創造力は、実践でしか身につかない。
批判力を鍛えている暇があったら、
ひとつでも手を動かして創造力を高めていくことが大切です!

黒澤監督の言葉
「シナリオはマラソンだ、遠く見ちゃいかん。
 目の前だけ見て走れ」
も、おっしゃるとおりです(笑)
ノベルゲームのシナリオといいますと
生テキスト1MBなどはザラでして、
シナリオ用の200字詰め原稿用紙にすると
4000枚ぐらいにはなるでしょうな。
ぞっとするでしょ?
今日もシナリオライター達はですね、
男子マラソン佐藤選手のようにヨレヨレになりながら
ゴールテープを目指しているのです!
よよよよよ。
下手に楽に、なんて意識しなくてもずっとそうです……

余談ですが、
橋本さんの足元はメレルのJungleMocであり、
頭にはサンバイザー、
なぜ脚本屋はみな、服装が垢抜けないのか(笑)
こないだBSアニメ夜話(「イデオン」の回)に出てた
松崎健一さんもツナギみたいな「永遠のSF少年」調だったし、
そう脚本といえば三谷幸喜さんなんかいつも
無理矢理な服着てキャラ作ってますよね。
思いますに、まず職人的要素あるので
「作業着」的になるのがひとつと、
もうひとつは、
脚本はやっぱり「人を描くもの」でして、
(小説は「自分を描くもの」。ちょっと大雑把ですが)
自分を「透明」にしておこう、
という無意識の現れかもしれません。
結構違いますよ、脚本と小説は。
サッカーでいうとボランチとFWぐらい。
同じといえば同じだけど違うといえば全然違う。
ながたも服装の垢抜け無さなら誰にも負けておらず、
「いいんだ、むしろ垢抜けて無い方がいいんだ」
とうなずきまくっていたTV前でござる。
posted by ながたさん at 18:06| Comment(4) | TrackBack(1) | お言葉
この記事へのコメント
目からうろこでした。
高校時代演劇部に所属して、何本か脚本を書いて、大会で演じてもいたのですが、大学に入り文芸批評を勉強するようになってから、まるっきり書けなくなってしまいました。無理矢理書いたとしても苦痛でしかたがなかったのですが、今において処方箋と出会うとは!
創作は一生の友となりますから、本当にありがたいです。
さすがの「ほえなが」!新カテゴリー「お言葉」も追加されて、ますますの発展を期待申し上げます!

全く関係ありませんが、現在上映中の「ダークナイト」が、ヒーローという存在に真摯に向き合った傑作で、お勧めです。特に「Routes」において一人のヒーローを描ききった永田さんであれば、より感じ入るところがあるかもしれません。(今現在、誰彼構わずポニョとダークナイトを勧める病気に罹患しております、これの処方箋はどこにあるんだろう…)
Posted by 田中 at 2008年08月31日 02:08
書けなくなる時期って、あると思います。僕も小学5年ぐらいから高校生まではよく書いてましたが、それから27ぐらいまで10年近くすぽーんと書いてません。
橋本先生のおっしゃるように、批評眼が強くなりすぎて、当然自分が書いてるものはそう簡単にレベルアップしないですから、その齟齬で嫌になるんでしょうね。
それを乗り越えるのは、やむにやまれぬ魂のシャウトというか、「下手でもなんでもいいから俺はこれを言いたいんだ!」という瞬間が来るかどうかだと思います。
私は来ました(笑)

「ダークナイト」評判いいですねー。あれ、バットマンシリーズっていうのが逆に足かせになってますよね。観に行きたいと思ってます〜。
Posted by ながたさん at 2008年08月31日 06:18
わたくしも、一応シナリオライターの端くれではありますがね。
「言いたいこたあわかるけど、理想論じゃねえの」
というのが正直なところ。
水泳や格闘技で「脱力せよ」と言われることがあるのですが、
それと似ているような気がします。
「そんなんできるようならハナっから苦労しねえっつうの!」
っていう……

それはそれとしてPCのノベルゲームって分量すごいですねえ。
以前担当したDSのノベル(的)ゲームではその半分もなかったですわ。
Posted by Ill at 2008年08月31日 16:31
どうもはじめまして。
ま、理想論かもしれませんが、どんな体術もめざすは自然体でして、余計な力なく自分の思うままが自然に出る、そんな境地を目指したいところです。

最近PCノベルゲームで主流なのは、ゲームブック的な「解く楽しみ」ではなくて、シナリオの中身そのものを楽しむタイプですので、どうしても長くなってしまいますね。価格的にも結構なお値段しますし、それに見合った歯ごたえとなりますと、これはもうかなり。
もちろんライターだけでなく原画さん、グラフィッカー、音楽マン、プログラマ、みんなそれに合わせて膨大な素材作ったり組んだりするので、最近のPCノベルゲーはホンマしんどいです。
でも、辛いけど少人数の分、バンドや小舞台に近い感じで小回りが効いて、作品に個性が出やすいのではないかと思っています。
Posted by ながたさん at 2008年09月01日 01:46
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